オズワルドの棺がオークションに——1400万円で落札、だが買い手に渡らなかった
2010年12月、カリフォルニア州サンタモニカ。ひどく傷んだ松材の棺がオークションにかけられ、8万7468ドル——現在のレートで約1400万円——の値が付いた。47年前、その棺に納められていたのは、ケネディ大統領を撃ったとされる男、リー・ハーヴェイ・オズワルド。だが、この落札で話は終わらなかった。棺は結局、誰の手にも渡らなかったのである。
兄が300ドルで買った棺
1963年11月22日、ダラス。ケネディ大統領が撃たれ、約1時間後にオズワルドが逮捕される。その2日後、ダラスの警察署で移送される最中に、ナイトクラブ経営者ジャック・ルビーに撃たれて死んだ。当局は彼を暗殺の実行犯と結論づけたが、本人が法廷で裁かれることは、ついになかった。
葬儀を整えたのは兄のロバートだった。簡素な墓前式の費用は710ドル。うち300ドルが、飾り気のない松の棺の代金である。埋葬地はフォートワース郊外のローズヒル墓地。参列者はわずかで、棺の担ぎ手には取材に来ていた記者たちが駆り出されたと伝えられる。
1981年、開かれた墓
オズワルドの死後、「あの墓に眠っているのは本人ではなく、よく似たソ連の工作員だ」という陰謀説が広まった。決着をつけるべく遺体の掘り起こしを求めたのは、妻だったマリーナである。兄ロバートは反対したが、1981年10月、墓は開かれた。遺体は歯の治療記録によってオズワルド本人と確認され、説はようやく葬られた。
このとき、水を吸って激しく傷んでいた元の棺は再利用できず、遺体は新しい棺でローズヒルに再埋葬された。古い棺は捨てられた——遺族はそう思い込んでいた。
ところが、棺は残っていた。1963年の防腐処置に立ち会い、のちにその葬儀社を買い取ったアレン・バウムガードナーが、壊れた棺を倉庫で保管し続けていたのだ。遺族に知らせることのないまま、およそ30年。
締切を過ぎても、入札は止まらなかった
2010年12月、棺はサンタモニカの競売会社ネイト・D・サンダース・オークションズの出品リストに現れた。開始価格は1000ドル。オズワルドの死亡診断書、防腐処置に使われた器具や台までもが、同じセールに並んだ。
締切時刻の時点で入札額は3万7404ドル。そこへ駆け込みの入札が殺到し、競売は2時間延長された。最後はふたりの入札者の一騎打ちとなり、競りが終わったとき、価格は8万7468ドルに達していた。20%の手数料を含む額と報じられている(8万7469ドルと伝えた媒体もある)。落札者は明かされず、棺を含む一連のロットは合わせて16万ドル超を売り上げたと報じられた。「ケネディ暗殺に関わる品は、何でも高く売れるんです」と競売会社のサンダース氏はAPに語っている。
テキサス州ウィチタフォールズに住む当時76歳のロバート・オズワルドは、この競売を地元紙の記事で初めて知った。彼は葬儀社と競売会社の双方に連絡を取って中止を求めたが、セールは止まらなかった。「これは金の問題ではない。あの棺は、何年も前に処分されているべきだったんです」。落札の数日後の取材に、彼はそう述べている。
「あれは贈り物だった」——法廷の理屈
数週間後、ロバートは葬儀社と競売会社を相手取って提訴した。売買は凍結され、棺は競売会社の手元に留め置かれた。のちの判決文によれば、この売買は最後まで完了していない。匿名の落札者が棺を受け取ることは、その後もなかった。
2014年12月、フォートワースの法廷で審理が始まる。葬儀社側の主張は独特だった。いわく、棺は兄から弟への「贈り物」である。「棺を買った時点で、ロバートが再びそれを目にすることはなく、永遠に地中にあるはずだった。テキサス州法の下では、それは贈与です」と代理人は述べた。つまり所有権はとうに兄の手を離れており、長年保管してきた葬儀社のものだ、という理屈である。
2015年1月30日、タラント郡のドナルド・コスビー判事が下した判決は明快だった。棺は1963年11月24日に300ドルで購入したロバートの所有物であり、その存在を30年にわたり遺族に隠して競売にかけた葬儀社の行為は「不当で、悪質かつ非道」。葬儀社には売却額と同じ8万7468ドルの損害賠償と、競売会社への保管料1万ドル超、そして棺をテキサスへ送り返す輸送費の負担が命じられた。判事は輸送にあたり、10万ドル以上の保険をかけることまで指示している。300ドルの松の棺に、である。
棺はどこへ行ったのか
裁判に勝ったロバートに、棺を売る気はまったくなかった。「できるだけ早く処分するでしょう」と代理人のガント・グライムズ弁護士は語り、こう続けた。「処分できるのは良いことです。あの棺は、彼が生涯背負わされてきたあらゆるものの象徴ですから」
その後、棺が実際に壊されたのかどうかは報じられていない。ロバート・オズワルドは2017年、この世を去った。半世紀あまりを「暗殺犯の兄」として生き、80歳で法廷に立ってまで取り戻したのは、誰も欲しがらないはずだった、壊れた松の箱である。
1400万円の値が付いても、ロバートにとってあの棺は売り物ではなかった。彼が望んだのは、二度と値札の付かない結末だった。
- [1] CBS Texas / AP「Lee Harvey Oswald's Coffin Sells For $87,469」(2010年12月) — www.cbsnews.com
- [2] NBC News / AP「Brother disputes sale of Lee Harvey Oswald coffin」(2010年12月) — www.nbcnews.com
- [3] NBC DFW「Funeral Home Wrongly Sold Lee Harvey Oswald's Casket」(2015年1月・判決報道) — www.nbcdfw.com
- [4] CBS Texas「After a Half Century, Lee Harvey Oswald's Casket Gets a Final Resting Place」(2015年1月) — www.cbsnews.com